「『靖国』の闇に分け入って―アートで表現するYASUKUNI」の報告と御礼

「『靖国』の闇に分け入って―アートで表現するYASUKUNI」の報告と御礼

 猛暑からいつのまにか秋を迎える候となりました。

今夏、「平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動―ヤスクニ・戦争・貧困」とのテーマのもと、韓国・台湾・沖縄・日本(ヤマト)を結んだ行動に連動して、「『靖国』の闇に分け入って―アートで表現するYASUKUNI」と題する美術展を去る8月4日~11日まで日本教育会館1F一ツ橋画廊で開催しました。「靖国問題」に美術を通じて向き合い、芸術と文化、そして対話で「靖国」の闇を照らし出す初めての試みでした。

 この美術展には、以下のような着目すべき点があげられました。
まず、ヤスクニをテーマに市民運動家たちと美術家たちが連帯して表現するという、相互にとって稀有な場が創出され、これにより幅広い観客を動員することができた点。次に、戦争を体験した世代から戦争を知らない若い世代まで、各世代の参加アーティストたちが各々の立場で歴史の記憶をつなぎ表象化した点。また、東アジア4地域のアーティストたち(安星金、洪成潭、井上修、金城実、井口大介、池田龍雄、大川祐、桂川寛、小島昇、富山妙子ら)が、日本人としての内なる視線と共に、「帝国日本」の植民統治下にあった「外」と「内」が交差する視線によって、ヤスクニを多角的に照射した点。そして、ヤスクニの「死者」が抱える人間の不条理を、美術表現を通じて人間の感性・情緒によって感じさせた点。さらに、イデオロギーを超え、人の生命の観点からヤスクニを問い、「慰霊」のかたちを示唆した点などがそれです。
こうした展示に加え、韓国の祥明大学・高慶日教授と学生たちによる「靖国風刺漫画展」、日本の「日本軍<慰安婦>問題アジア女性連帯会議実行委員会」との連携による作品なども展示され、多様なジャンルからヤスクニが表現されたことも見逃すことはできません。

 さらに参加アーティストたちをまじえて、8月9日に行った美術展関連リレートークでは、第1部「ヤスクニと表現をめぐって」(針生一郎/文芸美術評論家、鈴木邦男/一水会顧問、毛利嘉孝/社会学者ら)、第2部「東アジアと天皇制」(山口泉/作家、徐勝/立命館大学コリア研究センター長ら)というテーマで、左右の思想、政治と芸術を分断するのではなく、ヤスクニの本質に分け入ろうと議論が交わされました。

 美術展、そして100名近い聴衆で賑わったトークの現場にいらしてくださった方々、お力添えをくださった方々に心より感謝を申し上げます。とはいえ、この一連の試みにも不十分な点も多々あったことは否めません。今後は、その反省点をふまえ、「作品をつくること、見ること」から体感した経験をもとに、さらなる深度と広がりをもって、目前にある「靖国問題」に文化芸術的観点からも取り組んでいく所存です。

キャンドル行動実行委員会一同より、あらためて皆様からのご支援に御礼申し上げます。ありがとうございました。 

平和の灯を!ヤスクニの闇へ キャンドル行動実行委員一同
美術展企画者:古川美佳(朝鮮美術・文化研究