古川美佳 連続企画「21世紀の東アジア文化論」 洪成潭展「靖国の迷妄」

韓国の民主化運動を象徴する美術家
洪成潭(ホン・ソンダム)さんの靖国神社をテーマにした作品展が11月2日(金)より開催(~22日まで)
2日のオープニングにあわせ、作家自身が語るトークイベントもありますので、ぜひご来場ください。
洪さんは、昨年東京での靖国行動にも参加され、今回来日した後、すぐNew York行動へと向かいます。

「靖国問題」に芸術的に接近するという前代未聞?!の試み、ご関心ある方、ご友人等々にもお伝えいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。

○会場となるギャラリーマキは、茅場町3番出口徒歩7~10分
詳細は下記のサイトでもご確認いただけます。
http://www.gallery-maki.com/

論証━群島のアート考古学

古川美佳 連続企画「21世紀の東アジア文化論」Vol..2
洪 成潭(ホン・ソンダム/Hong Sung Dam)展
「靖国の迷妄」

期間:11月2日(金)~11月22日(木)
開廊:12時~19時  休廊:日・月

■11月2日(金)17:30よりオープニングパーティを行います。
また、18:30より作家を囲んでトークを行います。お越しをお待ちしております。
出席:洪成潭、山口泉、崔真碩、大浦信行、古川美佳(予定)  会場:新川区民館

韓国「民衆美術」を代表する作家・洪成潭(ホン・ソンダム)。「民衆美術」とは、韓国の軍事独裁政権の継続および1970年代以降の急速な産業化・社会構造の変化によって顕在化した政治的抑圧と社会的矛盾を、「歴史の主体は民衆である」という立場から表現しようとしたリアリズム美術運動である。特に80年代に民主化運動と呼応する芸術運動として多数の美術集団が生まれ、政治闘争と文化運動の結合を図り、稀有な美術的成果を残した。洪は80年「光州民主化抗争(光州事件)」を契機に光州市民軍の文化宣伝隊として活躍、「光州抗争・5月版画」と題する作品によって閉ざされた光州の惨劇を人々に知らしめ、市民美術学校を各地に開設するなど、民衆美術運動の先駆的な実践者となった。自らが共同議長をつとめた民族民衆美術運動全国連合の仲間たちと大型のコルゲ・クリム(掛け絵)「民族解放運動史」を共同制作したが、国家保安法スパイ罪容疑で89年より約3年獄中生活を余儀なくされた。出獄後は拷問の後遺症に悩まされながらも、その体験を作品にすることで克服、光州ビエンナーレ他、国内外で広く注目を集めている。民主化を獲得した現政権のもとで民衆美術が徐々に体制化していくなか、現在も政治的社会的問題へ向き合いながら、自らの理念を発展させ表現している。

 一方、21世紀のいまなお冷戦構造が残る朝鮮半島は南北に分断され休戦中であり、日本による過去の歴史清算も曖昧なまま、北朝鮮の拉致問題や核実験が浮上するなど東アジア情勢は混沌としている。今回、洪成潭は、いわばそれら東アジアの葛藤が象徴的に拮抗しあう場である「靖国神社」をテーマに作品を発表する。ここ数年の小泉元首相の靖国神社参拝に対するアジア近隣諸国等国内外からの反対の声に加え、昨年には靖国神社に無断で合祀されている韓国・台湾・日本人の遺族が合祀取り消しを求める訴訟を起こすなど、先の大戦をめぐる歴史・政治的齟齬は「靖国問題」となって、宙吊りにされたままである。そんななか、洪は何度も靖国神社を訪れ、遊就館をまわり、文献にあたり、あるいは解決に向けた運動にも関わりながら、その闇をみつめ沈潜しつつ、つぶやくように無意識の層から靖国をめぐるイメージをつむぎだした。それは近代化の過程で歴史的に押し込められてきた日本人自身の情緒と美意識を、韓国人である洪が靖国神社を通じて総括的に分析し、顕在化させる試みでもある。

 明治維新以降、日本の絶対主義的政治体制下において作動した軍国主義のシステムが、いかに美化されながら歴史化されていったか。「靖国神社に咲く桜は戦死した兵士の生まれ変わり」とされてきた、その歴史の虚構を日本人はなぜ美しいと感じるのか―「靖国の迷妄」。こうした問いかけから、死者と生者が出会う靖国へ美学的に接近する洪成潭。忘却されつつある植民地近代アジアの絡み合う魂への慰霊、未知なる和解のかたちへ向かう助走が始まろうとしている。

■展示制作形態:キャンバスにアクリル、紙に水彩、紙に水墨など

■洪成潭(ホン・ソンダム/Hong Sung Dam)プロフィール

1955年 韓国全羅南道新安郡に生まれる
1979年 朝鮮大学校美術科卒業、「光州自由美術人協議会」結成
1983年 市民美術学校開設
1988年 「光州民衆抗争連作版画展」
1989年 民族民衆美術運動全国連合による共同制作「民族解放運動史」全国巡回展、国家保安法により約3年間投獄
1991年 「世界の苦難を受ける良心囚3人」に選定される(国際アムネスティ本部)
1994年 「民衆美術15年展」(国立現代美術館、韓国)
1995年 第1回光州ビエンナーレ
1998年 個展(アムネスティ・インターナショナル、ロンドン)
      「世界人権宣言50周年記念 洪成潭・富山妙子2人展」(光州、富川、川崎)
1999年 個展(ガナ・アートセンター、ソウル)
2000年 第3回光州ビエンナーレ「芸術と人権展」
      第18回ワールド・ワイド・ビデオ・フェスティバル(オランダ)
2003年 個展「抵抗と瞑想1/EAST WIND」(クイーンズ美術館、ニューヨーク)
2004年 個展「仮花」(学古斎ギャラリー、ソウル)
2005年 光州民主化運動25周年追悼版画展(佐喜眞美術館、沖縄)など多数

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