2007年国際シンポジウム「人権・文明・平和の目で靖国神社を見る」開催(071108)

11月8日(木)は、コロンビア大学にて国際学術シンポジウムが開催された。韓国、アメリカ、日本の活動家、研究者たちから多彩な論点が提起され、今後、アメリカ社会においても靖国の問題を提起していくとっかかりとなった。総勢60人ほどの参加者の中には、NYに留学中の韓国・日本・欧米の学生たちの姿も見られた。

専門家基調報告Ⅰ(司会:河棕文)
10:00~10:30 第一発表  占領統治下での靖国神社(Mark Selden)
11:00~11:30 第二発表  靖国問題と日本のマスコミ動向(浅野健一)
11:30~12:00 第三発表  靖国神社をめぐる法的争点(内田雅俊)


 
最初に、コーネル大学のマーク・セルダン氏は、アメリカとの政治的関係で靖国問題を捉える必要があること、「ヤスクニ・ナショナリズム」を、アジア太平洋地域における対抗するナショナリズムの中に位置づけることの重要性、靖国をめぐる近年の日本の右傾化に対する日本社会の姿勢は、一枚岩ではなく深い亀裂のあることなどを提起した。引き続き、日本の浅野健一氏は、丁寧な調査研究資料に基づき、近年、靖国を巡る朝日や読売などの主要メディアの論調が中曽根首相時と小泉首相時とでは、その論調が大きく右傾化してきたことの重大性、また、靖国神社は、一宗教法人ではなく、侵略戦争に人々を駆り立てる危険な政治的装置であることが主張された。

第一部の最後に発言した内田弁護士は、戦後も戦前と同様に英霊の顕彰を行ってきた靖国神社の存続は、国家と靖国神社との密約によるものであること、靖国神社の「解体」は日本人自身が自国の正しい近現代の歴史認識を育てることが核心であることなどが強く言われた。靖国問題は国際問題でもあるが、日本人自身の手でその解決がまだなされていないことには忸怩たる思いがあることも述べられた。

専門家基調報告Ⅱ(司会:孫宙明)
13:30~14:00 第四発表  靖国問題に関する米国社会の対応(Barry A Fisher)
14:00~14:20 第五発表  靖国問題に関する中国社会の対応(Ignatius Ding)
14:20~14:40 第六報告  歴史和解の出発点としての靖国(Jean Chung)
14:40~15:10 映像報告  台湾高砂義勇隊靖国合取下げ運動

昼食後の第二部の最初に発表したのは、戦後補償の訴訟に関わってきたアメリカのバリー・フィッシャー氏。日本が戦争被害者に対する補償を拒否してきた問題の中心にある台風の目としての靖国神社を浮き彫りにした。続いて、LAの中国系活動家であるイグナチウス・ディング氏は、靖国神社の持つ侵略的、攻撃的正確を、神社の様子を映し出すスライドを見せながら、強く主張。日本人が第一にするべきは、謝罪ではなく、靖国に象徴される歴史認識を否定すること、謝罪はその次だと述べた。

最後に発表した、同じくLAで活動する韓国系のジーン・チョン氏は、2005年に日本政府が国連の常任理事国になるための動きを起こした時に、イグナチウス氏と共に、5-6週間でそれに反対する4200万の署名を国際的に集め、日本政府の画策を挫折に追い込んだ、IT活用した運動の成功例を紹介した。また、日本とアジアの戦争被害国との和解を果たすためには、一国の批判だけではもう不十分であり、新たなマインド・セットが必要であること、若い世代、在外日本人の役割の重要性が提起された。

総合討論Ⅱ(司会:河棕文)
14:55~17:40 総合討論  韓錫丁、孫宙明、李碩兌 及び参加者全員
17:40~18:00 閉幕 共同声明採択及び記念撮影

第3部では、フロアからの活発な質問と意見も出され、今後もアメリカの研究者や活動家を含む国際的なつながりの中で、靖国問題の解決に向けた戦略を立てていくことの意義が実感された。また、戦死した父親の名前の靖国からの取消しを求めているイ・ヒジャさんは、あらためて、その目標に向けて効果のある運動を展開することが訴えられた。